勉強会ログ第0クール第0回
平成20年2月20日
講演者:荻島創一先生(東京医科歯科大学難治疾患研究所 助教)
講演題目:『システム進化生物学:生命システムのグランドデザインの解明を目指して』
場所: お茶の水女子大学理学部2号館405室
参加者:豊田含めて6名
・最初の15分間は研究室紹介、次の15分でシステム生物学に入り、次の1時間はけっこう呪文講演だった。好きだけど難しかった。以下、豊田がわかる範囲でのメモ。
・システム生物学+進化を組み合わせて、進化の軌跡をシステム生物学という切り口で考える。
* システム生物学:タンパク質とかDNAとか物質にこだわらず、A+B→Cという関係が生体内でネットワークになっているから、そのネットワークそのものを考えよう、という学問。
* 進化:生物は共通の祖先(個体なのかDNAなのかは置いておいて)をもっていて、それが時間とともに増殖中に変化して生き残ってきたものが現存している、という生物の見方。
・具体例1:酵母内で互いに結合してはじめて機能を発揮するタンパク質どうしの関係性のネットワークの解析
* 酵母:全ゲノムが明らかになっている真核の単細胞生物。人類のお友達(アルコール発酵)。
* 互いに結合してはじめて機能を発揮する:遺伝子操作をして、ターゲットのタンパク質が互いに結合すると初めて生き残れる運命にさせられた酵母の実験。
・物理的に結合するタンパク質どうしは、遺伝子発現上でも連携しているか(遺伝子として近いか)を比較。
・ 酵母で調べられたタンパク質は、他の生物でも利用されているので、バクテリアなどと比較して、系統樹の近さで考える。
* 系統樹:昔は生物の形態学にのっとって、異なる生物がどれだけ近類か遠類かを決めていたが、現在は、異なる生物のもつ共通のタンパク質の遺伝子が塩基配列でどのくらい似ているかで決めている。
・ 解析結果としては、物理的に多くのタンパク質と結合するタンパク質が昔からよく保存されているわけではなかった。
・ しかし、物理的に結合するタンパク質のうちネットワークが近いものをモジュールというひとまとめにしたところ、太古からあったモジュールはよく保存されていた。
・ 考察:進化における生体内でのネットワークのひろがりというのは、徐々に広がるものではなくて、突然ひとまとまりのネットワークが加わる感じ(例えばゲノム重複など)じゃなかろうか。
* ゲノム重複:同じ塩基配列がDNA上に繰り返されている状態。
・ 具体例2:発生における進化の考え方ができるかについてHox遺伝子群のネットワーク解析
* Hox遺伝子:受精卵から細胞の塊になった後、はじめて頭尾−背腹が決まってくる幼生体の時期に、体節を決める遺伝子たち。
・ 発生において、系統樹に関係なく幼生体は動物全般でよく似ているらしいし、体節を決める遺伝子Hoxほぼ全ての動物に共通に使われている。
*幼生体は動物全般でよく似ているらしい:有名な絵があります。魚の幼生体から哺乳類の幼生体まで並べてみると似てるよね、というスケッチ。
・ Hox遺伝子群の塩基配列がどれくらい似通っているかをネットワーク解析。
・ 各動物でも比較。
・ 解析結果としては、太古からあったHoxは保存されているが、動物間での違いは、Hoxのうちの1つがそのまま重複されてはちょっと変化して、それが1つずつ加算されていく感じだった。
・ 考察:進化におけるHox遺伝子群のネットワークの広がりも、徐々に遺伝子が変化していくのではなくて、突然ひとまとまりのHoxが重複してそれが変化していくことで全体が変わっているのではなかろうか。
・ 質疑応答:生命の起源はシステム生物学的にどう考えるのか?:これから考える。
・ 質疑応答:酵母の具体例で、タンパク質−DNAの物理的結合を加味した解析はできるか?:これからやる。