勉強会ログ第1クール第1回
平成20年3月26日
講演者:豊田
講演題目:『Molecular
Biology of the Gene』第1章〜第5章
場所: 工学系総合研究棟2階第1会議室
参加者:豊田含めて12名
・ 勉強会の目的:理解したいことを理解する。知らなかったことは吸収する。それでもわからないこともある。でも進めていきます(後でつながって理解できることはたくさんある)。
・ 第1章:メンデルの法則の話
1. 対立する形質をもつ親と親をかけあわせると、中間の形質をもった子供ができるときと、できないとき(どちらかの親の形質が現れる)がある。
2. 中間の形質をもった子供どうしをかけあわせてみると、中間の形質をもった孫だけができるわけではない。
3. 遺伝の記号というものを仮定すれば、形質の出現の確率が説明できた。
4. 当時、細胞を顕微鏡でながめているとき、減数分裂のときの細胞の染色体(細胞を薬品で染めてみたら染まったもの)が、親のかけあわせのときの遺伝の記号と似た挙動をしている。
5. 染色体に遺伝の記号があるはず。しかし、1本の染色体に1個の遺伝の記号があるとすると、生物はいくつの染色体をもっていても足りない。
6. 2個以上の形質を一緒に観察すると、形質の出現の確率がズレていることが発見された。
7. 染色体には複数の遺伝の記号がのっかっていて、しかも染色体の一部が物理的に混ざることで、組み換えが起こるのだと考えられた。
8. 形質の出現の確率が大きくずれる=その形質は組み換えられやすい=物理的に染色体上で2つの遺伝の記号は遠い
9. 染色体上でどのくらい相対的に遺伝の記号どうしが遠いかを決めることができた。
10. (質問)古典的な遺伝子マッピングは現在のDNAシーケンサーによる解析とほぼ同じくらいなのか?→たぶんそう。
・ 第2章:遺伝子はDNAだ
1. 染色体はDNAとタンパク質の複合体であることが分析でわかった。
2. DNAやタンパク質をそのまま外界からとりいれる細菌を使う
3. つるつるなコロニーをつくる細菌を熱で殺して、その死骸を餌に、ザラザラなコロニーをつくる細菌を培養したらつるつるコロニーをつくった。(親と親のかけあわせから、物質を生物に与えて子供を分析する手法への転換)→死骸のうちタンパク質を分解してDNAを与えると、つるつるに、DNAを分解してタンパク質を与えると、もとのザラザラのまま
4. ファージというタンパク質とDNAの塊と大腸菌を使う
5. 人工的にファージのタンパク質とDNAは同位体で標識しておく
6. ファージは大腸菌に取り込まれて、大腸菌の中でファージのDNAとタンパク質がたくさんできてくる。→タンパク質は天然だったが、DNAは同位体標識されたものがのこっていた。
7. DNAが複製されるには?→同位体の餌(分子量がわずかに軽い)で細菌を育てる→子供の世代のDNAは親の世代のDNAに比べてわずかに軽い→孫の世代のDNAはわずかに軽いDNAと軽いDNAだった。→半複製的保存
8. DNAのモノマーは分析化学的に、4つであることがわかり、リン酸ジエステル結合で結合している。
9. 配列の解析は?→(1)GとC、AとTとが1:1の法則(2)X線解析による2重らせん構造→ワトソンとクリックによりDNAの構造と配列のモデル提案
10. DNA(形質の情報)からタンパク質(形質をつくる)は直接つくられていない→RNAという高分子が仲介をしている→セントラルドグマの提唱
・ 第3章:化学結合の話
1. 共有結合
2. イオン結合
3. 水素結合
4. ファンデルワールス力
5. 疎水相互作用
6. 共有結合とイオン結合と水素結合とファンデルワールス力:結合の安定性はエンタルピーで考える(分離するのにどのくらいのエネルギーが必要か)
7. 疎水相互作用:とりまく水のエントロピーで考える
・ 第4章:DNAができてゆくための自由エネルギー変化を考える
1. モノマーがリン酸ジエステル結合でつながっている高分子=DNA
2. エステル結合は平衡反応→逆反応がありえる
3. 平衡定数と自由エネルギー変化の関係→deltaG=-RTInKeq
4. dADPがdAMPとPに分解して、それがDNA鎖のn+1個目となる or dATPがdAMPとP-PとになってdAMPはn+1個目になり、P-Pが2Pへと変化する どっちがエネルギーとして有利になるか?
5. 前者は逆反応もすすむ(半分くらいしか反応しない)、後者は、P-Pが2Pとなる反応が一方的にすすむことと共役することで、反応がすすむ。
6. (質問)DNAの塩基対の水素結合や、πーπスタッキングのエネルギーで安定化する寄与は?→共有結合の形成のエネルギー分が最も大きいから、それらの寄与はわずかだろう
・ 第5章:タンパク質の構造化
1. タンパク質は20種類のモノマーがペプチド結合でつながっている
2. ペプチド結合の平面性→極限構造式での共鳴→側鎖は自由に回転
3. ペプチド結合は1Aごとに周期的にある水素結合部位→自分自身のいたる箇所で水素結合→αへリックス、βシート→側鎖の向きが大事→3次構造へ
4. DNAに相互作用するタンパク質の特徴→2重らせんの溝にαへリックスがかむ+αへリックスの側鎖がDNAの塩基対の余っている水素結合箇所に結合
5. タンパク質の形にひずみがかかって緩和しようとすると、DNAの方がほつれる