勉強会ログ第1クール第3

平成20月9日

 

講演者:田代・中西

講演題目:『Molecular Biology of the Gene』第20章および第21章

場所: 工学系総合研究棟2階第1会議室

参加者:豊田含めて12名

 

     第20章:(田代君作成のレジュメ抜粋)

     1.システムバイオロジーとは

1.     システムバイオのねらい

1.     分子生物学は、それらの成果をシンプルなシステムに関する取り組みに貢献している。そして、基礎的なメカニズムを事細かに研究することを可能にした。これまで伝統的なアプローチにより生物は分析されてきたが、より高度で複雑な生物的な組織は、定量性とハイスループットな測定とモニタリング、再構築、理論が必要になってくる。システムバイオロジーは数学や工学、物理学、コンピューター科学を、分子あるいは細胞生物学として巻き込む。その目的は、その生きているものの要素の働きの支配とそれをする定量的で予期可能な方法の相互作用のネットワークの創発的特性を記述することである。

2.     システムバイオと合成生物学:システムバイオロジーは、生物学的回路のデザイン原理の解明を求めている。一方、合成生物学は、遺伝子制御の自然経路の特性を模した人工ネットワークを作ることによってすることを試みる。このアプローチは、われわれのモデルがどのように制御システムとして働くかをテストすることが可能となる。一般的な自然のシステムのより複雑な回路よりも、さらに定量的な方法によって、そのような人工的なネットワークは分析されることを可能とする。

3.     システムバイオロジーにおける表現方法:制御回路は複数のノッドとエッジからなる簡単なネットワークとして描くことができる。ノッドは遺伝子を示しており、ドットとして置き換えられる。エッジはその一つの遺伝子が他の遺伝子の産物による制御と同じ意味で、線によって表されている。エッジは、ABを制御しているのか、あるいは逆かを示すための方向性を伝達することができる。

1.     ネットワークの表記:2つ以上の入力によって、ある遺伝子の発現が制御されている場合、電子回路図で用いられるようなANDゲートを用いる。

2.     ラクトースオペロン;ラックオペロンは、2つの制御タンパク質によって支配されていて、両方の種類の制御が複雑に絡み合った例を提供する。転写はLacリプレッサーを不活性化する誘発物質の存在と、DNAのアクティベーターであるCAP結合タンパク質を促進するcAMPの濃度上昇によって誘発する。したがって、このラクトースオペロンはシンプルなスイッチではない。その発現はリプレッサーの欠如とそのリガンドであるcAMPによってバインドされたCAPの存在の両方を要求する。

3.     (質問)とすると、図16-6とは、本当のAND論理ではなく、結合している、という意味でしかないと考えてよい?→ここでのラクトースオペロンの解説についてはそう考える。もっとちゃんとしたAND論理になる制御系もある。

4.     ネガティブオートレギュレーション

1.     強いプロモーターからの発現は、速い発現を保証するが、過剰な遺伝子発現が起こり、その分無駄になる遺伝子発現がしばしば問題→弱いプロモーターの場合、ゆっくり発現が起こるため、遺伝子制御しやすいが、素早いレスポンスが可能ではない

2.     ところが、ネガティブオートレギュレーションは、速いレスポンスと正確な遺伝子発現量をコントロールできる。

5.     ポジティブオートレギュレーション

1.     ネガティブオートレギュレーションよりも、定常状態になるまで時間がかかる。最高点の半分になる時間が、ネガティブオートレギュレーションよりもポジティブレギュレーションのほうが長い→ポジティブオートレギュレーションは展開が遅い生物的プロセス(例;胞子形成)に用いられる。

6.     遺伝子発現とノイズ

1.     同じ遺伝子型を持っていても、表現型が異なることが自然界で観察される。例;1卵生双生児の指紋や猫の毛→偶然的な環境の違い

2.     内因的ノイズ:個々の遺伝子発現レベルが細胞内で異なる

3.     外因的ノイズ:環境にある餌など、時間による遺伝子発現の変化がある場合

4.     多少のノイズがあっても、生物はシステムとして十分機能している。それは、ある程度のノイズが存在してもシステムが壊れないような柔軟性をそなえているから。これをロバストネスという。

5.     (質問)ロバストネスと恒常性との違いは?→ノイズへの抵抗を示す生物機能のことなので、環境適応という恒常性とは異なるもの。

7.     相反する安定状態を固定する制御回路

1.     ある制御タンパク質があるときに遺伝子発現がONになり、制御タンパク質がなくなったらOFFになるという遺伝子は可逆的という。

2.     一方でONになったら、その状態を保つスイッチ(電気のスイッチなど;トグルスイッチという)もある。

3.     Comの発現をLacプロモータのみで制御している回路と、ComKプロモータによる制御を加えた回路の2つを考える。Lacプロモータは、IPTGという分子がある場合に活性化される。

4.     lacプロモータとcomKプロモータで、comKの発現が制御されている場合、低濃度のIPTGによって、一気に発現が活性化している。そして、その発現はしばらく落ちない。

5.     (質問)ただのcomKのプロモータで制御された回路も考えないと、定量性の議論が疑問では?

8.     フィードホォワードループ回路

1.     3つの要素があるとき、(1)エッジの方向とエッジが2つのノッドをつないでいるのか、(2)3つのノッドをつないでいるのか、(3)ノッド同士が1つのエッジでつながっているのか?(4)ノッド同士が2つのエッジでつながっているのか?

2.     という13パターンとなりうる。

3.     自然界であるシステムを観察したとき、そのシステムがどのような挙動を示し、その挙動がどのパターンに当てはまるかによって、複雑な経路の中の単純化したデザイン原理を明らかにすることが出来る。

4.     ポジティブとネガティブを組み合わせたフィードホォワードループ回路の例:胞子形成、Drosophila胚の背腹のパターン

9.     振動パターン回路

1.     スイッチング遺伝子のONまたはOFFあるいはそれらの発現レベルの調節において、一般的な制御を考える。

2.     細胞サイクル、サーカディアンリズム、形態形成:2つ以上のネガティブフィードバックループが互いに制御しあっている

3.     自然制御ネットワークの特徴を模倣した合成回路:Elowitz& Leibler, Nature 403, 335 (2000).

     21章:(中西君のレジュメを抜粋)

     分子生物学の研究技術・核酸

     電気泳動

1.     不活性で多孔質のゼリー状であるゲルに電場をかけて、DNA, RNA分子をその大きさによって分離する。(分子ふるい効果)

1.     アガロース:

2.     ポリアクリルアミド:アガロースよりもより低分子量の分離

2.     パルスフィードゲル電気泳動:アガロースゲルでも分離の難しい非常に長いDNA分子の分離をすることができる。

3.     (質問)原理がわからない→長いひもを左右に非対称な力(時間)で段階的に揺さぶることで、徐々に分離してゆくことができる。

4.     DNAの検出:臭化エチジウム、DNAに結合すると蛍光を出す。

5.     (質問)なぜDNAに結合すると蛍光を出すのか?→DNAの核酸対の間にはさまることで、分子の平面性が高くなり、励起状態での崩壊や熱の放出の緩和がおさえられているのだろう。

6.     制限酵素:複数の制限酵素を使えば、DNA分子の異なる領域を単離することができ、DNA分子の同定ができる。制限酵素で切断後、電気泳動すると、分子は特定の電気泳動パターンを示す。

 

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